映画『哀れなるものたち』

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2024-01-30

ヨルゴス・ランティモス監督『哀れなるものたち』(あわれなるものたち、原題:Poor Things)をみた。自ら死を選んだ女性が、とある事をきっかけに生き返り、『新たな人生』を歩む話。

『新たな人生』というのは、記憶喪失になってしまい…といったありふれた設定ではない。本当にゼロから築き上げるものだ。くるくると映る美しい画に対し、台詞や展開からはコミカルさが伺える。カメラワークもヘンテコ。急に寄ってみたか思いきや、魚眼レンズを用いて、ホームビデオのように主人公のベラを追いかけはじめる。それもまた、世界観に合っていて飽きなかった。モノクロからカラーに切り替わる所も、あまり違和感を感じることはなく楽しめた。なんならカラーグレーディングのパワーも相まって、ファッションやインテリア、さらに街の中の質感に対する解像度が上がってわくわくした。

でっかいパフスリーブのトップスに、ペチコートのみという装いで、力強く歩くベラの姿が非常に印象的。なんかもう、とにかくやりたい放題。思うがまま。好奇心に身も心も委ねて過ごす。そんな彼女も成長するにつれ、理不尽や感情の複雑さを知る。それらに自らを委ねたり、抗ったりもする。含まれている成分だけを掻い摘んでみると「よくある話」にも思えるが、自由と解放をテンポよく、痛快に描いた寓話だった。劇伴も様々な種類の弦楽器が鳴っていた。ハープのぽわぽわした音が好みで、とても楽しかった。

 

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好きなシーンはたくさんあったけど、個人的にはダンスシーンでめちゃくちゃ笑いました。

そういえば全然関係ないんですけど。「スケープゴート」って言葉、まんま「贖罪の山羊」の意なんですってね。